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日別アーカイブ: 2025年10月20日

第22回内装工事雑学講座~コンセプト設計とゾーニング—体験を逆算する~

皆さんこんにちは!
大翔株式会社、更新担当の中西です。

 

美しい空間は“偶然”では生まれません。誰に、どんな気持ちになってほしいかを言語化し、その体験から逆算してゾーニング・導線・視線・音・匂い・光を設計します。本回は、ブランド/暮らしの“核”を抽出し、席数やストック率、清掃・補充の運用まで含めて現実的に落とすための設計術です。

 

1)体験の核を言葉にする(3秒コピー)
• 「静けさが働きを深める図書室オフィス」
• 「焼きたての香りに吸い込まれる路面ベーカリー」
• 「家族の“ただいま”が重なる回遊リビング」
コピーは判断の物差し。素材や色、照明、音量、家具の硬さまで、このコピーに“合うか”で選びます。

 

2)ペルソナとジャーニー ‍♀️➡️
• 来訪前:SNSでの期待値、外観の視認性。
• 入店:ドアの重さ、匂い、温熱、音圧。
• 滞在:席の密度、視線の抜け、机の奥行き、電源位置。
• 退店:会計の流れ、出口の混雑、サイネージ。
各フェーズの感情曲線を描き、不快の谷(待ち渋滞、眩しさ、騒音、臭気)を潰します。

 

3)ゾーニングの数理とコツ
• 面積配分の目安(飲食例):客席60〜70%/バック10〜15%/ストック10%/動線5〜10%/サニタリー5〜10%。
• 動線幅:主動線2,000mm/スタッフ動線1,200mm/車椅子回転1,500mm。交差点は“ポケット”を作る。
• 席数試算:必要席数=ピーク同時利用 ÷ 回転率 × 安全係数1.1〜1.3。
• 視線設計:入口→カウンター→奥行きの“アイキャッチ三点”。鏡・床材切替・間接照明で“矢印”を作る。
• 音のゾーニング:吸音天井(岩綿・有孔ボード)+カーテン・ソファで吸音。NC-35〜40を目標。

 

4)図面に落とす手順 ✏️
1. 隣接表(アジャセンシー):厨房↔︎洗浄↔︎ストック↔︎搬入、会計↔︎出入口、バック↔︎スタッフWC。
2. ブロックプラン:柱・梁・PSの制約を乗せる。避難経路・面積区画・内装制限を初期から反映。
3. 什器の奥行き:レジ・厨房・デスクは奥行き基準(例:デスクD700、棚D450)。
4. 見切り・目地:床の張り方向、目地ピッチ、見切り材(L・T・コ型)の指定で“整った感”を早期に固める。

 

5)“写真に写る導線”を設計する
SNS時代は、実物の良さ=写真の良さではありません。鏡面反射・グレア・色温度のズレで写真が“濁る”ことが多い。演色性Ra90以上の要所器具、間接照明、色温度2700〜3000K、壁は高反射率で肌がきれいに写る配色に。

 

6)失敗あるある
• 席数を盛りすぎて回遊できない。
• 収納をケチってバックヤードが崩壊。
• 視線の抜けが無く“圧迫”。天井にライン間接を入れるだけで高さの錯覚を作れるのに未実施。
• 厨房やバックの騒音・臭気が客席に漏れる(換気計画の逆圧対策不足)。

 

7)チェックリスト ✅
☐ 3秒コピーに合わない要素を排除
☐ 隣接表→ブロック→実施図の連携済み
☐ 主動線2,000mm・交差ポケット確保
☐ 収納容量(㎥)を品目別に積算
☐ 音・匂い・光の不快の谷対策
まとめ:ゾーニングは“地図作り”。気持ちよく迷える空間は、実は緻密な数理と運用の設計から生まれます。

 

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ゾーニング実践キット
A. 隣接表→ブロック→導線の“3枚法”テンプレ 1) 隣接表(Adjacency Matrix):要素=客席/会計/厨房/洗浄/ストック/バック/トイレ/入口/サイン/ゴミ。必要関係を◎○△×で記入し、◎は距離5m以内/見通し可の定義に固定。 2) ブロックプラン:1mグリッドで柱・梁・PSを落とし込み、避難経路(有効幅900/1200/2000mm)を緑、搬入出を赤で描分ける。 3) 導線(Flow):利用者/スタッフ/清掃の三層導線を色分け。交差数をカウントし、0〜1を合格基準に。
B. 視線・音・匂いの“不可視ゾーン”設計 – 視線円錐:着座H=1200、立位H=1500から30°/60°の可視扇形を描き、見せ場(サイン・商品)に重ねる。鏡は二次視線で奥行きを演出。 – 音:吸音天井+家具ソフト材で初期反射面を抑制。NC目標(会議=35、カフェ=40、学習=30)を図中注記。 – 匂い:厨房・ごみ置場・喫煙室は負圧。出入口はエアカーテンか風速0.2〜0.4m/sの気流で遮断。
C. 席数・回転率の“数理” – 必要席数=ピーク同時来客×(滞在時間/60)×安全係数1.15。 – 回転率=(営業時間×席数)/(平均滞在×満席率)。満席率は時間帯別に0.6/0.8/1.0で試算し最小値で設計。
D. 1/20モックの作り方(写真に強い配置検証) – 床割付テープ(10mm=200mm)で目地通りを実寸換算。スマホ斜光でグレア/影を確認。什器高さを替えて視線の抜けを比較。
E. 失敗パターン→是正 – 入口直後の滞留:待機ポケットと視線の矢印を追加。サインは3段階(外→入口→内部)。 – バックヤード縮小で補充崩壊:ストック容積(m³)を商品回転で逆算し不足を見える化。
F. チェックリスト – [ ] 三層導線(客/スタッフ/清掃)の交差≦1 – [ ] 視線円錐に“見せ場”が入る – [ ] NC目標・負圧ゾーンを図面に注記 – [ ] 席数/回転率の算定根拠を明記

 

 

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