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日別アーカイブ: 2025年11月25日

第24回内装工事雑学講座~仕上げ材・建材の基礎—床・壁・天井・巾木・見切り 🧱📐~

皆さんこんにちは!
大翔株式会社、更新担当の中西です。

 

断熱・防音・吸音は「同じようで全く別物」。熱の移動(断熱)と、音の遮断(防音=遮音)と、音の反射を抑える(吸音)の三兄弟を混同すると、コストはかけたのに体感が変わらない…という事故が起きます。本回は、図面・仕様・現場施工で迷子にならないための指標・材料・納まり・検査を網羅します。

 

1)用語と指標の超要約
• 断熱:熱抵抗R[m²K/W]/ 熱貫流率U[W/m²K]。室内温度の安定・結露リスク低減。
• 遮音(防音):壁・床を通って伝わる音を止める。指標は D値/STC(壁間の音の減衰)や L値(床衝撃音)。
• 吸音:音の反射を減らす。指標は NRC/吸音率、残響時間 RT60(響きの長さ)。
よくある誤解:「吸音材を詰めた=防音できた」は誤り。遮音=重さ×層構成×気密、吸音=表面+空気層+厚み。役割が違います。‍♂️

 

2)断熱の勘所(室温・結露・省エネ)
• 熱橋(ヒートブリッジ)対策:LGS(軽量鉄骨)は熱を通しやすい→間柱間充填+連続気密、必要に応じて内側連続断熱でブリッジを切る。
• 気密の重要性:断熱より気密先行。コンセントボックスや配管貫通部は気密ブーツ+気密テープで処理。
• 結露:露点計算を行い、防湿層の位置(室内側)と透湿抵抗の連続を担保。冷蔵・厨房・浴室周りは特に注意。
• 材料:グラスウール、ロックウール、発泡ウレタン、押出法ポリスチレン。厚みと密度で性能が決まる。

 

3)遮音の勘所(会議室・店舗・住居)
• 質量則:重いほど遮音性は上がる。9.5→12.5→15mm石膏ボードの二重貼りはコスパ◎。
• 二重壁+空気層:躯体⇄LGS⇄ボードの二重系で共振周波数を下げる。空気層は50〜100mmが目安。
• グラスウール充填:空気層の吸音で中高域の遮音を底上げ。密度24k以上を推奨。
• 気密:コンセント背面、見切り、天井との取り合いを連続コーキング。スリット天井は音漏れの抜け道。
• 開口部:ドアは防音枠+戸先・沓摺ゴム、ガラスは合わせガラスや二重窓。最後は隙間が勝敗を決める。

 

4)吸音の勘所(響きの調整)
• 狙いはRT60:会議室0.5〜0.8s、カフェ0.7〜1.0s、学習室0.4〜0.6sが目安。吸音面の面積×平均吸音率でざっくり試算。
• 材料:岩綿吸音天井、有孔ボード+グラスウール裏張り、吸音パネル、カーペット、カーテン。初期反射面(壁・天井)に効かせる。
• 低音対策:コーナーにベーストラップ(厚物)を置くと効く。家具計画で吸音量を稼ぐのも現実的。

 

5)納まりとディテール
• 壁頂部:天井との取り合いはすき間ゼロ。地震すべり(ディフレクションヘッド)を採用する場合は気密ガスケットを併用。
• 床取り合い:巾木裏の空洞で音が回り込む→目地充填と巾木上端シール。
• 設備貫通:配管スリーブは防火措置+気密。多条配線はモルタル充填→シールの二段構え。

 

6)検査と是正
• サーモカメラで断熱欠損を確認。
• スモークテスターや感圧紙で気密の抜けを検出。
• 簡易遮音試験(SPからピンクノイズ→隣室で測定)で定性的にチェック。数値化が必要なら専門測定を発注。

 

7)チェックリスト ✅
☐ 断熱・防湿・気密の連続が図示されている
☐ 壁頭・巾木・貫通部に連続シール指示
☐ 重要室のドアは戸当たり+ガスケット
☐ 吸音量(m²×吸音率)の試算とRT60目標
☐ 施工後に目視+簡易測定で検証

 

まとめ:重さ・層構成・気密で遮音、厚み・空気層で吸音、連続性で断熱。“音と温度の地図”を描き、図面・仕様・現場でブレずにやり切ることが、快適で疲れにくい空間をつくります。✨

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熱・音の計算と現場検証
A. U値・露点のクイック算定 – 熱貫流率U ≒ 1 / ΣR。R=厚み/λ(熱伝導率)。例:PB12.5(0.21)+GW100(2.5)+PB12.5(0.21)→R総≈2.92、U≈0.34W/m²K。 – 露点チェック:室20℃RH50%(露点≈9.3℃)。各層温度を熱抵抗比で割付し、防湿層位置を室内側に設計。❄️

 

B. 遮音アセンブリの目安(推奨) – STC45:PB12.5二重+LGS@455+GW24k+空気層50mm+PB12.5二重。 – STC50:上記+二重スタッド(縁切り) or 防振チャンネル。 – ドア:ソリッド+ドアボトム+戸先ガスケットでRw35〜40目標。

 

C. RT60(残響)ざっくり設計 – Sabine:RT60=0.161×V/ΣαS。会議室V=60m³、吸音面αS=80m²×0.3=24 → RT60≈0.4s。 – 低音は厚物とコーナーで稼ぐ(ベーストラップ)。

 

D. 検査プロトコル – 気密:スモーク/感圧紙で抜け確認→連続コーキングで是正。 – 遮音:ピンクノイズ→隣室測定→ΔdBを記録。スイッチBOX背面は要補強。 – 吸音:拍手試験を動画記録しRT60推定→吸音パネル増減を決定。

 

E. 典型トラブル→是正 – 天井ふところから回り込み:防音スラブ or 上階ふところにグラスウール、パーテーションをデッキまで。 – コンセント漏れ:バックボックス気密+石膏ボード切欠部にバックブロッキング。

 

F. チェックリスト – [ ] U値/露点の算定と防湿層位置 – [ ] STC目標とアセンブリ仕様 – [ ] ドアの戸先/ボトム/沓摺 – [ ] RT60計算と吸音面積

 

 

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